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甲信ブロック  滝澤恵一(副会長)

長野県佐久市の岩村田本町商店街に本店を置く有限会社和泉屋菓子店(代表取締役阿部真一氏。従業員三十数名)がある。洋菓子、和菓子の製造販売をしている地域一番店である。数年前から、佐久地方の農家が生産した農産物を活用して、毎月、数点の商品を製造販売している。

阿部社長に「お菓子とは何ですか?」とたずねると、「菓子は食です。食ですから、地産地消が原則です」という答えが返ってくる。地域の農産物を活かして、自分たちで企画し、製造、販売をしている。

「ふじ」の無袋栽培の発祥の地として有名な五輪久保の農家が栽培したリンゴ、米の産地として有名な「五郎兵衛新田」の餅米、ラフランス、ブルーベリー、胡桃、イチゴ、花豆などなど、旬の農産物を活用している。

うわさがうわさをよんで、農家の方が自分たちで栽培した農産物を「試作に使ってください」と、持ってきてくださる。阿部社長の人脈と地産地消を具現化している行動力、従業員の商品開発への情熱と長年培ってきた技術力、さらにプロモーションの的確さによって、これまで以上に顧客が増え、売上も伸びている。

お客様にとっても「生産者の顔」が見え、「安心安全」であり、その上に「おいしい」という価値がある。農家にとっては、地域に毎月配布しているチラシ広告に自分たちの顔が載り、市場に出荷するよりも高い価格で取引しているという価値がある。和泉屋菓子店にとっても、市場から、あるいは販社から仕入れるよりも、安く仕入れることができる。

農家から農産物を仕入れるにあたっては、社長や従業員が現場へ行き、農家の方の「農業や食」などについての考え方や栽培方法を聴いてくる。商品開発の時も、製造するときも目の前にある原材料と、これを栽培してくださった農家の方の顔や圃場の様子が浮かぶ。単なる物体としてのモノを使い、モノをつくり、モノを売るのではなく、モノに「何かが加わったもの」を活かし、創り、販売している。食のあり方、地域の農業についてのメッセージを伝えている。

和泉屋菓子店にとって、このような方向に踏み出した背景は、阿部社長が理事長をしている「岩村田本町商店街振興組合」の「経営」がある。当商店街を取り巻く経営環境の変化の中で(車で2分ほどのところに長野新幹線佐久平駅があり、大型店、チェーン店が目白押し)、平成8年に「旧商店会」の青年部のメンバーが中心になって振興組合を設立。当時の理事の平均年齢が30.7歳という全国でも例が少ない振興組合であった。

彼らは「地域密着顧客創造型商店街」をコンセプトとして掲げたが、これを具現化するにはどうしたらよいのか、立ち止まってしまっていた。その時、筆者の講演を聴き、指名され支援することになった。
「商店街を経営する」「意志を持って経営する」ことの大切さとともに「誰のための商店街か」「誰のための店か」を考え、「ともにいきるまちをつくる」を経営理念にし、「手造り、手仕事、技の街」を商店街コンセプト(事業コンセプト)にした。買い手であるお客様だけではなく、農家の方はじめさまざまな方々とともにいきる、という考えができあがった。現在は、県内でも数少ない「空き店舗が減少を続けている」商店街となっている。

また、阿部社長はじめ理事数名で「後継者講座」を受講し、自社の事業や商品を明確にするために、「菓子とは何か」「菓子製造販売を通じて、お客様や社会、地域に何を提供しているのか」などの問いについて、自らが考え、自らが答を出したということも地域の農業者と連携し、地産地消を実現している大きな要因である。

今回は、地域の農と商工が連携して、お客様にとっても価値を創りだしている事例であるが、次回は、和泉屋菓子店に農産物を販売している農家について述べてみたい。

 
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