一般社団法人 農業経営支援センター

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農産物直売所の業態としての特徴
―3ケ所の店頭調査に見る顧客の実態と対応・その1-

地産地消部会リーダー 近藤 穣

 

1.顧客第1主義に徹すれば拡大余地は大

「農産物直売所とは、いったいどんな性格をもつ業態なのか」「今後いかなるサービスを強化すべきなのか」・・・原点に立ち戻り、消費者の行動や意見のなかから提案したいというのが本文の狙いである。私ども農業支援センターの会員も参加し、関東エリアにある直売所のA、B、C3ケ所について平日、土日の2日に分け各200人ほどを目標に顧客の店頭調査をしてきた。計6日で全体では約1,200人強の調査をしたことになる・・・Aは幹線道路から奥まった地域密着型の立地にあり売り場136坪で近距離型、Bは観光客も通る幹線道路に面し133坪で長距離型、Cは主要幹線道路に面する「道の駅」付帯の店で約平均70坪で超長距離型あること理解しておいてください。

なお、私自身は別途食品スーパーの立地調査のため全国400エリアで計15,000人の消費者の訪問調査をもとに、「スーパーを取り巻く顧客の買い物動向」についても分析してきたので、直売所とスーパーのポジショニングの違いも明確にしていきたいと思う。

いま全国には、3,000を楽に超える毎日営業の直売所があるとされ、季節だけの直売所、農協店舗内やスーパーの直売コーナーまで加えた年商は、年率20%ほどずつ伸び、平成20年には1兆円になると見られている。調査した結論から言えば、「直売所運営の改善余地は多数あり、スーパー並みの顧客第1主義が貫かれ、マネージメントやマーティングが充分なされれば、まだまだ成長する業態」と思っている。午後の品揃え、売価設定、POPの工夫、営業時間などまだまだ解決すべき課題が山積している・・・店舗新設だけでなく、現状の実態をつかむための店頭調査、分析、問題点の改善にそった診断・指導に、ぜひ支援センター会員をご利用願えれば幸いである。

2.どのくらいのエリアから来ているか

まず直売所の商圏は普通、「半径5kmくらい」とされている。しかし、実際は規模や立地、性格(たとえば道の駅付帯とか、高速道路のサービスエリア)によって様々である。新店を出すばあいのリサーチ技法の確立のためにも、既存店の店頭調査は必要なのである。
表-1のように、「地域密着」をコンセプトとするAは136坪だが、住宅地型の立地のため5km以内が90.1%になる。また長距離型のBは133坪だが、5km以内は約60%にまで減り、幹線道路+道の駅のため超長距離型のCはわずか70坪だが、5km以内は23%という低率である。理論半径はA6.1km、B17.8km。C24~26kmほど。「理論半径」は距離ごとの割合を累計した%を最小二乗法という方法を使い傾向方程式を出し、その値が100%になる距離である。実際は26kmを超える県外の客も、Cでは9.3%になる。ともあれ、直売所は商圏が広いため、交通手段の自動車比率は近隣型のAで67.3%だが、B86.5%、C87.4%と高くなる。

食品スーパーでは8方向平均の商圏半径は狭いばあい800m(東京下町)、広くて2.5km(長野や群馬県)だから、大きな違いがある。この違いは食品スーパーと農産物直売所の機能的なポジションの違いに通じると思う。

表-1 距離別の集客割合%

食品スーパーはそれぞれ個性を持っているが、生鮮4品、日配品、加工食品、日用雑貨を中心にしたワンストップ・ショピング(1か所で総て必需品が揃う)が基本である。基本が類似しているため、小商圏を深耕してそれぞれが分割して支配する形になる・・・そうは言え、実際の顧客はスーパーを使い分け、平均4店ほどは立ち寄っている。

食品スーパーでもアップ・グレイドの店、コープの店、超ディスカウントの店は強い個性を持ち、近場だけでは潜在顧客が少なく、逆に「浅く広くからの集客」になっている。都市部で2~4km、ローカルでは8~16kmとか20kmになる場合もある。農産物直売所は食品スーパーと異なり、農家が運営の主体、青果を中心とした新鮮さ・美味(時に花、肉、魚、手作り惣菜も含む)、地元産品の野菜ほかの豊富さ、中抜きの合理的安さ、顔の見える販売(安心)・・・などの強い個性を持つ業態店と言える。その個性を求め、遠方からでも車でレジャー・ショッピングや息抜きを兼ねて来るのだ。

50坪以下の小型農産物販売所は、逆に近隣のスーパーに青果の品揃えで劣り、ワン・ストップショピング力でさらに劣ることになり、都市部や近郊でも今後苦戦することは間違いない。統合-大型化を図り、主力商品の青果・花などの品揃え、鮮度、安全・安心、地元の特徴ある商品などにおいて、はるかにスーパーを凌ぐよう体制を整えるべきである。食品スーパーを真似て総花的な品揃えとサービスにすれば、個性がなくなり逆に顧客の支持を失うはず。

3.どのくらいの頻度で来ているか

それではどの程度の頻度で顧客が来店しているか・・・表―2のように、週単位の頻度に直して整理したばあい3例とも週1度が最も多く、1km以内に限定したばあい平均でAが週1.24回、Bが1.22回、Cが0.80回となる。66地区における主婦の訪問調査では、スーパーなどに買い物に行く回数は週4.59回・・・だが先記のとおり4店に分散。1番店の頻度シェアは平均50%前後で、週2.3回ほど行く計算になる。直売所のばあい、来ている人だけの回答が週1.24~0.80回・・・来ない人まで入れると0~1km圏でも週0.19~0.26回と低くなる。日常性からすると、やはり「近くて、ほとんどのものが揃い便利な店」が望まれ、スーパーに流れスーパー同様の頻度は望にくい。

地域密着型のAでも週1回>2回>0.5回>0.63回>3回の順になっていて、スーパーとの違いは歴然としている。「たまには、息抜きやレジャーショッピングで直売所に行き、新鮮で安い野菜ほかを買いたい」という人が主に来店している様子がうかがえる。午後の品揃え強化、営業時間の拡大、品揃えの拡大(野菜+花+日配品中心のワンストップ)などで、まだまだ頻度が伸びる可能性を秘めているのだが、スーパーとの基本的な顧客ニーズの違い、ポジションの違いは埋まらない。

事例Cは70坪と面積が最少なのにA・Bをはるかに凌ぐ超繁昌店。ここは野菜の品揃えが抜群に良く、米飯系の惣菜、漬物、やわらか餅、米、タマゴなどの品揃えも良く、最近になり精肉も置くようになっている。Bでも花がすこぶる充実しており,Cは青果の陳列、POPも重視し、センスある販売がされている・・・こうした部門ごとの専門店化や販売促進の向上こそが、頻度向上の早道と信じる。

表-2 週の来店頻度
(注)0.03は「初めて」の人。例えば0.13回は月0.5/4週、0.88回は月3.5/4週として算出。

4.どんな年齢層が利用しているか

利用者(主に主婦中心の)の年齢だが、A・Cの2事例しか分析できないのだが、表―3のように50代、60代の人が中心である。その割合は平均65%=約2/3にもなる。生活にゆとりがあるとか、時間にゆとりがある世代が中心で、子育てやパートに追われる20~40代の若い世代は、2地区の平均では24.9%と極端に少ない。

直売所のばあい、①スーパーと違い、かなり遠方になるので時間的ゆとりがないと行けない、②営業時間が午後5時とか長くて6時のため、若い兼業主婦、正勤主婦が利用しにくいこと、③2と大いに関係するが、午後とか夕方近くになると品物が少ないこと(残れば生産者は引き取るのが原則で、追加出荷を嫌う)・・・などが関係している。①②に関係し、Aのばあい日曜はレジャーショピング客が多くなるため、平日に比し20・30・40代の若い客が1.65倍の計34.6%に増える。特に増えるのがのが育児やパートで多忙な30代で、2.65倍にもなっている。

問題は③である。最近、関東の某集落営農集団を訪問(イネ、ダイズ作地帯)したが、「プラス・アルファとして、野菜などの直売を考えないと、今後所得が増えていかないのでは」と言うと、「地元に複数の直売所があるが、夕方4時になると残った商品を売り場の外に出されてしまう。こんなわけで、直売所へ出荷をしたくない」と言う。

表-3 直売所利用者(主に主婦)の年齢構成%  B直売所は調査項目から欠落

これではまずい。スーパーと違って、「顧客さん第一主義で、そのニーズに応える」の姿勢がまだまだ定着していないのが普通のように思う。①午後に出荷したら、翌日12時に引き上げる、②午後に出したら奨励金を出す、③近隣の市場出荷の商品も一部仕入れ、夕方まで商品をある程度潤沢に販売する・・・など解決策がいくらでもあるはず。調査したA・B・Cではこうしたことにも配慮し充分な品揃いをていても、なを「夕方は欠品だらけ」の苦情も多い例もある。兼業主婦にも愛される直売所になってこそ、年代の若返りによる持続的な発展も可能になる。それには営業時間の延長や休日の再検討も望まれる。

なお、男女別の顧客比率を確認していないが、C調査の聞取り客の割合からすると平日で女74.8:男25.2、休日で女70.2:男29.8であった。夫婦で来ているばあい、どちらに回答してもらったかで結果が異なり正確には分からない。60才以上の男子客のみ取りだすと、定年退職で暇なためか、男子全体に対し平日59.6%:休日45.6%と平日が多い。散歩、ジョッキングなどの途中で寄る人が結構多いことを示す。これらは「主夫族」であり、今後ますます増える貴重な顧客である。

5.顧客は何が魅力で来るのか

表-4のとおり「来店理由」については、野菜ほかが「新鮮」というのがトップで、3地区平均92.3%という高い支持率である。次いで「安い」が平均53.5%、以下「安心」の29.4%、「品質・味」の28.3%、「青果の品揃えが豊富」の25.3%と続く。

食品スーパーの場合、「店の選択基準」という切り口で、実来店客の「来店理由」と異なるが、
13都県、55ケ所の訪問調査では、①近い70.6%>②生鮮品の鮮度61.3%>③安い35.6%>④チラシを見て29.8%>⑤1ケ所で総て揃う=ワンストップ27.1%>⑥品揃え豊富26.1%>⑦買い慣れている23.3%と続き、他の17因子は10%台から1%と低くなってる。物理的な問題の「近い」ではスーパーに軍パイが上がるのが当然だが、切り口の違いを無視すれば「鮮度」「安い」「安心」「品質・味」「青果の品揃え」では、直売所の支持率がスーパー平均を凌いでいる。この5点と地元産品の充実を図るならば、個性においてスーパーとの競争の圏外に立て、楽に売上を伸ばすことが可能になる。

表―4 来店の主な理由(複数回答)

直売所もスーパーも、「近い」を除くと「新鮮=鮮度」が1位である。日本は四季折々、豊富に新鮮な野菜・果物・魚が出回り、伝統的に「鮮度志向」の強い国だ。このためスーパーも保鮮技術も駆使し、鮮度の確保では目覚ましい進歩をとげている。また多くのスーパーは野菜の直売コーナーを持ち新鮮さを売りにしており侮れない。見てくれの鮮度と、朝採の鮮度とでは美味しさ、栄養価において決定的な違いがあるが、毎日売り切り-朝採り品の補充の姿を見せるとともに、痛み品、傷ものなどの厳しいチェックも必要である。、夕方の品不足対策や品揃えの充実のため、普通大型直売所のばあい20%以下位を目安に仕入品も入れているが、日持ちのよいジャガイモ、タマネギ、ネギ、生シイタケ、果物類など中心に、「芽が出ていた」「カビが生えていた」「腐っていた」「水分が飛んでいた」といったウッカリ・ミスも多いものである。店長を中心に職員全員で不良品ゼロ運動をするくぐらいでないと、「鮮度」の支持率90%以上は維持できない。Aが「新鮮」の支持率が94.6%とややB・Cより高いのも、男子職員が陳列の手直しをし、その時に痛みなどもチェックしているためと見る。

次に2位の「安さ」だが、包装資材、運送費、市場手数料などの中抜きがされるのだから、その利益の一部は顧客に還元すべきである。「新鮮で味もよいから高くて当然」とする意見もあるが、顧客側は「直販なのだから安くて当然」と考えており、平均53.5%の支持を失うことになりかねない。超繁昌店のCでは、スーパーなどの価格も見、仲卸からも仕入れ価格情報をつかみ、毎日上限価格を打ち出し、これを超えない・・・とのルールを守っている。「安さ」の支持率も63.6%と高く、売り場1坪年1,200万円という高い販売効率の、原動力の1つになっている。

3位の「安心だから」というのは、約30%と予想ほど高い数値ではない。かつ「科学的根拠もあるので安全」とする人は11.7%(2店平均)とさらに少ない。売り場に顔写真が掲示され、パックに個人の名も出ているので、「危険のあるものは売るはずがない」との安心感を30%ほどの人に与えていることは確かだが、残り70%ほどの人のうち、全員ではないだろうが一部の人は「安心」について疑っている面があるはず。これについては、第2部の「苦状・要望」の項も参照いただきたい。

出荷者も反省すべきで、「生産者の顔と名前を公開しているから安心・安全面でも信頼されている」と考えるのは早計である。減農薬・減化学肥料の特株農産物、有機農産物をふやすとか、トレーサビリティ(生産履歴の記帳+農薬ポジティブリスト制順守)の品を増やす努力が望まれる。現状では、この努力がなされていない直売所が多い。

4位の「品質・味」は、スーパーでは7.3%ほどの選択基準に過ぎない。これが切り口の違いがあるものの28.3%という支持率にあることは、「直売所の品は、新鮮、完熟などに留意しているから、栄養価も高く美味い」と評価されているからだろう。堆肥など有機肥料の利用による土壌改善や、適期収穫による美味さを追求める必要がある。地場産の果物があれば、糖度計を用意し糖度のチェックやアッピールもすべきである。

5位の「青果物の品揃え豊富」は、スーパーで回答を得ていないが、日本セルフサービス協会の会員調査によると、1店平均で青果+花卉合わせ376品という結果がある。花卉が50品と想定すれば、青果は326品ほど。直売所の品揃えは品目間口は狭く、選択アイテム(個人別に品質差のあるものを1アイテムとすると)の多い奥行き型である・・・ホウレンソウ、コマツナ、キュウリ、トマト、ハクサイなど大量販売される同一品目について、多数の出荷者が出荷しているのが普通で、中・少販品の品揃えが悪い。生産部会を設け計画的に、珍しい品も地元で作るようにするか、果物や一部の野菜を市場仕入をしないと、顧客は別途スーパーで購入することになり2重手間になり、大変不便な存在になる。

Cはこの面で31.7%の高い支持を得ているが、11月の調査ではたとえばサトイモ7品のほかに「とうの芋」1品、「八つ頭」5品、「唐のいも」1品、「セレベス」2品、「ヤム芋」1品とサトイモ系全体が豊富である。またハンサム・レタス、からみダイコン、ルッコラ、チンゲン菜、ターサイ、紫ブロッコリー、黄ブロッコリー、ちじみホウレンソウ、黄ニンジン、じねんじょうの実などスーパーにないものもあった。一部間口においてもスーパーを凌いでいるのである。サンショの葉、穂シソ、モロキュウリなどの芽物・妻物、ハーブなど挑戦作物は無限である。奥行き・間口ともにスーパーを凌ぐ品揃えになれば、青果のワンストップの店として万全となるはず。 (第2部では、要望・苦情を中心に、さらに顧客第1主義の販売を提示したい)

 
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