会員・部会の研究報告

会員の研究報告

農商工連携とコーディネータ・人材の育成
関東ブロック 副会長 加藤 寛昭

本稿は、全国中小企業団体中央会(全国中央会)と全国農業協同組合中央会(JA全中)とが共同で進めている、農商工連機推進研究会における2009年度報告書のうち、筆者が分担して執筆した内容を全国中央会様のご了解をえて、当農業支援センターのHPに掲載するものである。

1.成熟した農商工連携の現場から見えてくること

山形県には、傾斜のきつい木材の伐採跡の森に火をつけて農作物を栽培する伝統的な「焼畑」農法が残っている。火をつけることで土壌消毒や病害虫を死滅させることができる。もともと山は落葉がつもっており土質が柔らかく耕す必要はない。木灰はそのまま肥料となる。こんな焼畑で栽培されるのがこの地方固有の伝統野菜「藤沢カブ」である。同じ森での藤沢カブ栽培はたったの1回だけである。連作はできずその後数年間は土地を休ませて再度植林等を行い森に戻す。木材の伐採から埴栽に至るまでのサイクルの確保により永続的な林業、農業の実現を見ることができる。土の地力の収奪農業ではない。南米アマゾン川流域等に見られるような環境破壊型の焼畑農法とは全く異なり、むしろ環境に配慮する自然との共生を実現した農法といえる。
 こうして作られ収穫されたカブは、そのまま貴重な特産品として地元のレストランや直売所等に青果として出荷されるものもあるが、多くは生産組合を通じて地元の漬物業者に出荷される。カブの赤い色(アントシアン)はお酢と化学反応をして赤紫からピンク色をして食欲をそそる。さらに漬けこみに際しては、合成保存料、化学調味料、着色料等は一切使用しない。これが漬物の全国的ブランドとして有名な藤沢カブの漬物であり、地元の漬物業者による直売をはじめ食品店や大手流通業者の店頭で引っ張りだことなっており、出荷量の少ない年ではシーズンの2月頃までには売り切りじまいとなる。現在では、ネット通販の比率も高くなってきており販売チャネルの広がりにより全国ブランド化が進んでいる。
 ここに一次産業産業者としての林業・農業と二次産業としての食品加工の漬物業者と三次産業者としての販売を担当する小売店や流通業者の間に、太い絆に結ばれた連携体ができあがり、全体が地域にとって重要な漬物産業の一角を担っている。さらに地元の消費者からの熱い支持がありこの地方に固有な漬物文化にも大きく貢献しており、これをいわゆる成熟した農商工連携の事例としてみることができる。
 しかしながら、この連携体の構築には、長い時間と連携体を構成する関係者の藤沢カブを思う熱い想いと、そして時にはいくつかの危機に直面しながらも、その都度関係者の努力と知恵で解決をしてきた過去の経緯も見逃すことができない。
ご多分にもれず、当地方も農業分野では高齢化が進み、後継者が少なく決して楽ではない急斜面での農作業のためによる労働力不足や、収量重視の栽培作物の指導等により赤カブの栽培がどんどん減り続け、ある集落においてはたった一戸の農家だけが自家用に細々と栽培するだけにまで激減をしてしまった。こうした実情をみた農家の人たちの中から、今一度この地方に伝わるこの赤カブを特産品として復活させようとしての取組みが進められ、その結果藤沢カブとして再度市場に出荷されるまでに作付けが広がった。それと同時に、ただ単に“青果”として出荷していただけでは、珍しい商材としての評価はあるが付加価値がつかず地域における貢献度が少ない、という地元の人の思いがつのってきた。その要請に応えたのが地場の漬物業者であった。漬物業者としても他地域の同業者との差別化を実現するにはこの藤沢カブは魅力的な原料素材の一つであった。漬物業者が幻の野菜になりかけていた藤沢カブを本格的に漬物として加工、販売することで、農家にとっては安定的な販路が確保でき、しかも地元で確保できたことで出荷経費も抑えられるといったことで収益性も向上するといったメリットを享受することができた。こうした農・工の思惑が一致したことでこの連携体の目的が明確になり、関係者の間では想いも共有され地域固有の連携関係が形成、確立されたといえる。
 しかしながらこれとは反対に、連携体にとって危機と思われる苦い経験も時にはあった。前述したように藤沢カブは立ち木を伐採した後地を焼畑として活用しており、その年に木材の伐採が少なければ栽培面積も少なくなる。また、農業の宿命である天候の不順等により生産量も大きく減少することがあり、漬物業者としては原料の減少が直接売上高に反映するだけに関心の大きいところである。過去において、不作のため量の減少が農側から漬物業者に伝えられていた年に、青果物としてこの藤沢カブが地元産直施設や通販業者で販売されたことがあった。漬物業者側からすれば、長年にわたり構築してきた信頼関係のもとで継続されてきた取引関係を重要視すれば、このような状況下にあっては、自分たちへの供給を最優先にして欲しい、といった思いを強くしたのは当然のことである。「自分たちと生産者との関係はもっと強いものであったはずだ、との思いがあったのであの時は本当に残念でした。」とは漬物業界の役員の方の言葉である。「しかしながら、あの時、自分たちも反省することがありました。自分たちは知らずしらずのうちに、いつのまにか、農家の方に対して俺たちは“買ってやっているんだ”といった態度で接していたのではないか。そんな一方的な感じを農家の方たちに与えていたのではないかと皆で話し合いをしました。その結果、あれ以後、焼畑を行う際には、必ず自分たちも一緒に参加をし、またきちんと契約をして取引をするようにしました。その主な内容としては、最低仕入れ数量と最大仕入れ数量を取り決め、契約数量以上の収穫があった場合は栽培農家が青果として自由に販売できる。また、値決めの時はJAの担当者にも立ち会っていただき文書化することとしました」、とも付け加えられた。
 このように成熟した連携関係においては、双方の立場を理解する余裕とリーダーの知恵によって、長期的な広い視野に立った大人の対応で問題点を解決することが可能である。農商工等連携促進法の条文には“…単なる取り引き関係だけでなく…”とか“…中小企業者と農林業業者とが有機的に連携して実施する事業であって…”とあるが、この有機的とはまさにこのような関係を指す言葉であるものと解釈すると理解しやすい。
 本事例においては、通常、連携事業において不可欠といわれる外部からのコーディネータの存在はみられないが。これは長年にわたり継続・維持されている連携であり、すでにそれぞれの立場と役割が経験を通じて暗黙のうちに理解、分担されており、また、製品開発における専門的な知識の導入等の必要性が無いほどに確立されているからである。言いかえれば、必要に応じて漬物組合の役員とか農側ではJAの責任者等が当事者のリーダーとしてそれぞれの守備範囲において責任を果たし、調整役を担っているものと思われる。

2.コーディネータの定義とその役割・機能

文字通り連携事業においては、今まで一緒に仕事をした経験のない者同士が一緒になって、新しい価値創造に向けてそれぞれの得意とする技術、ノウハウ、シーズ、販路等を持ち寄って挑戦するものである。従って、①当然そのスタートは関係者の出会いとフォーメーションの確立からはじまる。また、この段階での重要な要素は関係者全員のベクトル合わせと役割分担の明確化である。②次いで第二段階としては具体的な製品・サービス開発である。この段階での重要なポイントはいかに消費者の目線で製品開発を行うか、といった点であり、これに関しては製品開発の専門的な知識と経験を有したコーディネータ若しくはアドバイザーが確保できるかである。③第三段階がそのブランド化と事業化(販路開拓を含む。)である。ブランド化は製品開発の一環としてとらえることも可能であるが、ここではいかに市場における差別的優位性の確保のためにブランド構築が重要か、の視点から製品開発とは切り離して敢えて事業化と一緒に推進すべき項目としてとらえた。④そして、最終目的の地域の活性化を実現させるというのが連携事業におけるステップといえよう。
このステップに従って事業を推進するに当たっては、いわゆるコーディネータと呼ばれる人たちの活動が不可欠とされている。本項ではそのコーディネータの役割や機能、必要な資質、課題等を明確にしてその必要とされる人材の育成に向けての環境整備のための事実確認を展開する。その具体的な手段として、筆者もパネリストとして参加した財団法人食品産業センター主催の「地域食品の市場開発とコーディネータの役割」のパネリストの発言録から集約を図ることとする。なお、パネリストは5名であり、全員がクラスター事業におけるコーディネータを実際に務めており、プロジェクトのグランドデザインの作成支援から具体的に製品開発や販路の開拓支援等に携わっている人たちである。
 なお、コーディネータという言葉は、明確な定義がなされないまま、ある種の職業なり資格を示すごとき言葉が多用されているが、ここでは「生産者や食品企業を含む異業種の円滑な連携体制を構築、促進するための取りまとめ役で、食料産業クラスター形成の中心的役割を担う人の意(クラスタージャパン2007 40頁引用)」をその定義としたい。しかしながら、最近では単なるとりまとめ役だけではなく実際の事業のプロデューサーとしての役割も期待されてきている。

<発言録の要旨>
 [コーディネータの種類と役割]

K:  わが県では科学技術総合支援センターがクラスター創造活動にかかわっており、食、住、遊の三つの分野で展開を図っているが特に食の領域を重点的に取り組んでいる。具体的には、当事者の企業と農業者、専門家とコーディネータ(私ども)からなるプロジェクトチームを編成して、概ね3年から5年程度かけて商品やサービスの開発に取り組んでいる。
H:  連携事業においては、その発展段階に応じてその時々の課題に応じてアドバイスできる個別的な専門的知識を有するコーディネータと、出会いの段階から事業化されるまでの一気通貫をみられる総合プロデューサーすなわち企業で言うプロダクトマネジャーが必要である。
N:  当クラスター協議会では地域の実情と人脈を熟知して活動しており、クラスターマネジャーは専門分野で期間目標に向かって参加メンバーの意思統一を図りながら事業展開をしている。クラスターマネジャーが何か障害に突き当たった時は、私が総合マネジャーとしてその障害を取り除く役目をしている。
F:  農商工連携では3分野それぞれ文化・思考の違いがあり、そこを乗り越えるのに時間がかかる。歩み方を揃えるまでのトレーニングは事業を通じてやるほかない。そのため、当地域ではコーディネータを2種類おき、マネジャーとクラスターマネジャーで役割分担をしている。
M:  新製品開発の支援はコーディネータの重要な役割であるが、そのためには地域の農水産物だけでなく、それに付加できる歴史、文化、などのストーリー性、地域の人々の考え方、気候、地理的特性、観光からの視点、販売チャネルの妥当性、販売業者からの要望等を客観的に評価できること、消費者からの意見聴取、メディア対応、種々の人との情報交換等々のために常に飛び回ることが出きることがコーディネータの要件ともいえる。
司会者
(マーケティング
専門の大学教授)
 みなさんのご意見はほぼ共通しており、連携事業においては専門的な分野での活動を期待するプロダクトマネジャーと総合的な面からみられるプロジェクトマネジャー的な二役がいることが分かった。一人で二役をこなせる場合と、分担しなければならない場合とがあると理解したいと思う。

[推進に当たっての問題点、課題等]

H:  農業者は、手厚い保護政策のもとにあって、自分でリスクを負って新しいことに挑戦するといった気迫に欠けている。契約概念も中小企業者に比べると低い。天候が悪かったので思ったように収穫ができなかったですまされてしまうこともある。また、生産ありきからスタートし「消費起点」にたった物作りの経験がないため、連携事業の推進においても俺は作る人の域を脱する考えに乏しく、連携体構築の一員としての自覚に欠けることが多い。ただ、これらの現象からだから農は遅れている、といった言葉で片付けるのでなく、農と商工の間には“言葉の違いがある”といった位の認識のもとで相手を理解し想いを共有していく努力が必要である。
N:  商品開発にはタイミングがある。そのためにスケジュール管理には気を配っているが、農業者の方の反応が鈍くその対応に苦労をした。当地域では平成19年から規格外の青紫蘇を使った製品開発に取り組くんだ。実需者側の中小企業者は加工業者、飲食店も含めて10社ほどが参加して開発を進め、具体的なレシピー開発は6カ月ほどで終わったのですが、思うように農家の方の協力が得られず困った経験がある。農家からの協力を得るために、JAの野菜部会に参加したり、婦人部の料理研究会に参加するなどを通じて人間関係を構築することに努力をし、やっと青紫蘇加工研究会に生産者がかかわるようになったのは20年6月になってからであった。このように農商工連携においては商工の側が積極的に農の側に踏み込んで地ならしをすることが効果的である。また、農協との連携を進めると市の農政部との係りも必要となるのでそれへの配慮も必要となる。参加者はほとんどが個人商店の集まりであり、地域のさまざまな人が参画してさまざまな意見を出し合ってものづくりをしている。企業的な物作りのようにきちんとした開発ステップを踏みながらではないところが地域食品開発の面白さかとも思う。
F:  消費者ニーズを十分把握しないまま作り手側の思いだけで製品開発に取り組でしまうことも多い。私のところでも特産品の梨の規格外品の活用といったコンセプトから安易に取り組んで失敗した事例がある。確かに、味はよくても市場には出回らないSサイズや、ちょっと形が悪いだけで産廃として金をかけて処分していた大量の梨が有効に活用できるメリットが大きいことは誰の目にも明らかなことである。農家の収入も上がる。私の役目は、この実現のために製品開発にあっては消費者目線でものを見るという考えを徹底してもらい、そのために必要な人材や組織、機関を見つけてくることにある。幸い、私は行政側で街づくりプロデューサーとしての立場もあり、県や市町村、中小企業団体中央会、商工会議所、JA、大学や公的な試験・研究機関等からの支援を得易い環境の中で活動を展開できている。
K:  みなさんのご意見の他の課題としては、招聘したコーディネータへの謝金の捻出の苦労がある。名の通った先生をコーディネータとしてお願いするにも、十分な謝金が払えないため断念せざるをえない状況にある。また、表面上はコーディネータ謝金を計上しても、そのほとんどの原資を私が工面するという、なかばボランティア状態で対応をしている。従って、コーディネータは必然的に私の有する人的ネットワークに依存することが多くなっている。
司会者 :  共通認識として連携事業といっても、農と商工の間には言葉の違いがあり、相互理解が上手く進まない、加工品を作り出すうえで原料を提供する農側の意識が想像以上に低い、せっかく本格的になって取り組もうと思っても専門家のアドバイスを得るための謝金が少ないため招聘できない、など切実な悩みまで打ち明けて頂き感謝する。Nさんが指摘されている地域食品作りは普通の企業が取り組む商品作りとは違いがある。だから面白い、の想いに私も心を動かされた。Fさんは、街づくりプロデューサーとしての顔があることで、多面的な支援が受けられていると述べている。農商工連携事業においては、農業振興、中小企業振興、地域振興(地域課題解決)とセットで考えていかないと上手くいかない事業かという思いがある。単独企業がナショナルブランドやプライベートブランドを作り出すマーケティングと、地域連携事業で新たな価値を生み出していくプロセスには違いがあっても仕方がないといった受け止め方も必要であると思う。それだけにマーケティングが分かり、地域づくりが分かり、コーディネータも務められる、という役割を果たせる人材が求められるのであろうが、それらを全部兼ね備えた人材はそうはいないのではないか。
皆さんのご意見からは、コーディネータとして、連携の構築、新商品開発、販路開拓までのプロジェクトマネジャーというキーパーソン役を果たすことが非常に大変なことであるという立場の重さが伝わってきた。次に、地域食品を地域文化の時代の中でブランド化し、育て行くためにどうすべきかを提言して頂きたい。
M:  私ども研究所もコンサルタント集団としていろいろな地域での商品開発のお手伝いをしているが、残念ながらFさんがいわれるように、シーズ先行型や作り手側の意向を出発点とする開発パターンが多くその軌道修正に苦労をしている。例えば、「売れるコメづくり」というキーワードであるが、「売れる米」とはまさに産地側の視点であり、消費者の視点でとらえるならば「食べたい」とか「美味しい」とか「残留農薬がゼロの米」というような発想が求められる。
H:
 結論的な内容になりますが、ブランド化して事業として継続できるためには、
  1.  当事者だけでなく地域全体が地域食品の貴重性の認識とそのブランド化に取り組む姿勢があること(地域全体とは、中小企業者、農家、JA、流通業者、金融機関、中央会、商工会議所、観光協会、行政、住民等をいう)
  2.  地域における信頼性の高いリーダーの確保
  3.  食品においてのブランド化に欠かせない三つの要件すなわち、原料の規格基準と製造・品質管理の基準の確立とその遵守。次に安全・安心の確保。そして最後に美味しさの基準を定義すること
  4.  継続的にウォッチするコーディネータあるいはアドバイザーの確保(常に外部からの刺激を与える必要がある。)
  5.  自分たちがやっていることを全てお客である消費者に知ってもらう努力をする等々が考えられる。

3.農商工連携の課題

上記の発言録から農商工連携事業におけるコーディネータの役割の重要性とか機能については明確になったが、一方で連携事業を継続することにより地域経済の活性化を実現するには、連携体を構築する農商工の各主体自身が抱える課題を解決することが要請される。と同時に地域の中小企業や農業の現場の従事者の連携による相互理解の促進や、行政も含んだ地域が一体となってこのような取組みを支援していく仕組みをつくることも進化する農商工連携事業には課題として指摘できる。資本力や経営力に劣る農業や地域産業にあっては、生産量や価格競争では大手や大消費地の生産者に打ち勝つことはできない。そのためには付加価値の高く競争力のある商品開発と販路確保による事業の安定化を目指さねばならない。しかしながらこの必要性はわかっていても、中小企業では思うように販路が拡大できなかったりすることが多いからである。
 連携主体である農と商工の課題の主なものが上図である。農の課題としてはまず、自立した経営体としての意識改革と自立できる環境整備があげられる。次いで消費者目線でとらえた栽培品目の決定など戦略的な思考に基づくマーケティング力の強化、そして安全性の確保できた農産物の安定供給といったものがあげられる。商工の課題としては、まず最初に農の特殊性と言葉の違いがあることを理解したうえで農との意思疎通を図る必要性があげられる。次いで、差別化戦略に基づく製品開発とそのブランド化をあげることができる。最後に共通の課題としては、その事業の理念、目的、コンセプトの共有を図ることを指摘しておく。この共通認識が実現されないと冒頭の山形の藤沢カブの事例にみるような危機を乗り切ることは難しくなる。

4.JA全中と全国中央会の人材育成への役割

農商工連携における主体者の課題は前述の通りであり、それぞれが個別に対応を取ることが望まれるところである。しかしながら、その必要性は理解できても、その課題への取組み方がわからず手が打てないといった場合が多く、そこに外部からの支援活動としてそれらに対応できる人材を育成、支援する必要性がある。後述の第6章で取り上げる「農商工連携等人材育成事業」はその事例といえる。
 さらに、この面でJA全中に期待する役割として、連携体を構成する主体としてのJAの意識喚起への取組みをあげたい。戦後の農業はどちらかというと、米を中心にした食糧の安定供給を狙いとして、産地形成や、少品種大量生産による効率化、生産性向上を追及してきた。
 協同組合の特徴でもあるが、生産者とJAは品目別の生産部会(生産者による共同選果場・出荷・販売の組織)を組織し、一定の品質・量を集めて市場流通を中心に販売してきた。このような「共同販売」方式により、市場での有利販売を目指すとともに、JAと県段階・全国段階のJA連合会が販売事業における機能・役割を分担することにより、さらに有利性を発揮しようとしてきた。
その結果JAや個々の生産者は、作付け品目の生産性や品質の向上により、市場ニーズに合致させようと取組んできたものの、一方では、加工による付加価値づくりや消費者起点で作付け品目を選定する、売り先を自分で見つけて販売するといったマーケティングは苦手科目ではなかったか。JAグループの中での連携が中心で、商工との連携は必要性をあまり感じなかったと言える。
農商工連携事業の拡大を図るための行政や各種団体、全国中央会等が主催する普及セミナー等においても農側からの出席者数は極めて少ない。連携事業としての認定申請にあっても、残念ながら中小企業者からの依頼に応えただけといった声が多い。農商工連携の究極の目的には地域経済の活性化が狙いとしてある。その実現の手段として新しいビジネスモデルとしての異業種との連携体構築による事業展開が図られているところである。再度藤沢カブの事例を見ても、地域全体の活性化のためには単独の農家だけの参画による連携ではなく、その地域全体の農家の参画があってはじめて山形の藤沢カブとの評価を得ることができている。JA全中の指導のもと都道府県中央会そして地域の単協への働き掛けを通じての人材育成を図っていただくことが肝要かと思われる。また、JAは主要な品目の生産・販売に関しては、組織づくり(生産部会)や営農指導を行うが、地域特産品といえども少量品目の場合については、営農指導員の手が行き届かないことが多い。
 仕方がないので、自社でJAを退職した営農指導員を採用してフィールドマンとして活用しているが、JAはもっとこうした伝統的な商材にも手を貸して欲しい、それが地域の農家の収入増にもなるし地域経済の活性化にも貢献するはずだとの声にも耳を傾けていただきたい。
 全国中央会には、全国で7,000名いるといわれる農業改良普及員との協力関係をぜひ構築していただきたい。彼らも農商工連携の教育を受ける機会が多くなっており、何よりも農の現場を誰よりも熟知しており、マッチング機能を期待することも可能である。