会員・部会の研究報告

会員の研究報告

食料産業クラスター事業におけるコーディネーターについて
業務局長・関東ブロック 加曽利 文之

1.食料産業クラスター事業におけるコーディネーターへの期待

(1)食料産業クラスターの必要性

①食料産業を取り巻く厳しいマクロ経済状況

  • 少子高齢化、人口減少による消費の減少
  • 輸入食品の増加がもたらす価格の下落、競争の激化
  • 輸入加工原料の価格上昇によるコストの上昇
  • 消費者嗜好の多様化や嗜好の急激な変化

②地域食品産業の急がれる対応

  • 生残りには新製品開発、新販路開拓が不可欠

               しかし

  • 中小零細企業が地域食品産業の中心
    • 個別企業が取れるリスクの量が小さい
    • 個別経営体毎の経営資源の質と量は不足気味

③市場モデル

(2) 食料産業クラスターとは

①食料産業クラスター形成の位置付け

地域の食材、人材、技術その他の資源を効果的に結びつけ地域に密着した食品産業の振興を図るため、農業・食品産業・関連産業・その他異業種もふくめた連携の構築(食料産業クラスター)を推進する。このため、食料産業クラスター形成のための協議会を各地方に設立し、加工適正に優れた品種や新たな加工技術の開発・導入、地域食材を活用した新商品の開発等の取組みを推進する」 (平成17年3月閣議決定「食糧・農業・農村基本計画」より、一部加工。)

クラスター(Cluster)
ハーバード大学 マイケル・E・ポーター教授が提唱した概念。 言葉の本来の意味は「房(ぶどうの房等)」や「群れ(魚の群れ等)」等

②食料産業クラスターとは

「食品産業と農林水産業を一体的にとらえ、コーディネーターが中心となり、地域の食材、人材、技術等の資源を有効に結びつけ、新たな製品、新たな販路、新たな地域ブランド等を創出することを目的とした集団である」
(財)食品産業センター H18年3月発行パンフレット 「食料産業クラスター」(以下「パンフレット」)1頁、クラスタージャパン2007 P40引用)

③ダイヤモンドモデル

(3) クラスター形成により期待されるメリット

シナジー効果

②効率的な製品開発・経営課題解決

製品開発に必要な技術・知識が身近に集中的に存在クラスター内経営体間の活発な人的・知的交流情報交換等による効率的な問題・課題解決の可能性

③産業の活性化による雇用創出・地域の活性化

(4) コーディネーターの位置付け

➀各都道府県に設置される食料産業クラスター形成推進拠点(「食料産業クラスター協議会」)に配置

②生産者や食品企業を含む異業種の円滑な連携体制を構築促進するための取りまとめ役

③食料産業クラスター形成の中心的役割を担う人

(5) コーディネーターへの期待

・歴史的に長い時間をかけて形成されてきたクラスターを政策的に短期間で形成するための起爆人材

(6) 食料産業クラスター推進のフロー

2.食料産業クラスター事業におけるコーディネーターの役割

(1) 食料産業クラスター事業コーディネーターの役割

①概念図

②一般的なコーディネーターとの違いは?

  • 世の中には様々なコーディネーター(以下 一般的コーディネーター)が存在
    例 ブライダルコーディネーター、インテリアコーディネーター、カラーコーディネーター、 フードコーディネーター
  • 「何かを調整する」という意味では一般的コーディネーターと食料産業クラスター事業コーディネーターとに大きな差はないがそれ以外に大きな差異

(2) コーディネートの対象

「顧客創造」と「産業の担い手育成」=→地域産業の活性化

  • 「顧客創造」  
    ブランド軸=価値発見、価値実現、価値提供を通じた顧客発見 × 顧客の信頼獲得
  • 「産業の担い手育成」
    産業化軸=産・官・学の連携による価値の事業化・産業化×シナジー効果

(参考)コーディネーター
生産者や食品企業を含む異業種の円滑な連携体制を構築、 促進するための取りまとめ役で、食料産業クラスター形成の中心的役割を担う人の意(クラスタージャパン2007P40引用)

(3)クラスター形成概念図


(4)コーディネーターに期待される役割

コーディネーターが取り組むべき4つの柱

①地域ブランドの育成

②事業化・産業化の支援(ネットワーク)

③連携推進の方向付け

④クラスター形成の各ステージにおけるPDCAサイクルの運営・管理

3.現状の問題点と課題

(1)人員確保

人的資源不足の理由

  • コーディネーターの位置付けの不明確さ
  • コーディネーターへの謝金の低さ
(2)食料産業クラスター発展段階モデルが未策定

①全体的な問題

  • コーディネーターが共通して準拠することが可能なモデルが策定されていない
  • モデルが未策定な為、段階的に投入すべき支援策の準備がなされていない。→ 「段階」の設定ができないため。
    例 「パンフレット」8頁
    食ニーズの抽出は誰が行うのか?どんな支援が用意可能か?

②「発見ステージ」概念と同ステージに対する対応策不足

  • 価値発見・調査(ニーズ、シーズ調査・まとめ)に関する体制・費用が確保されていない
  • クラスターの柱となる経営体や産業を探す方策がシステ ム化されていない(コーディネーターの持ち込み案件に 頼りすぎ)

③プラン二ングの問題

  • 長期的ビジョンの策定をコーディネーターが行うのか、それとも他の誰かが行うのかが不明確

(3)コーディネーターに求められる能力の育成

  • コーディネーターの能力を育成するプログラムが未整備
    食料産業クラスターコーディネーターは、クラスターを形成する経営体の経営者や一般的なコーディネーターとは異なった視点・
    視野を備えている必要がある。