一般社団法人 農業経営支援センター


地域資源開発−四国の3優良事例
(有)オー・ツー代表取締役 大原一郎氏の講演要旨


今回紹介の内容は2007年11月16日に開催された「中小企業診断協会経営シンポジューム」1部の大原氏が「地域資源を宝物にする秘訣」と題して話した基調講演の要旨である。氏は高知県生まれで、フードコーディネーターとして高知県を中心に村興しを多数成功させている(過去においてホテルのシェフをしていたとのこと)。「逆転の発想」で多数のヒット商品を作り、田舎デザイン大賞、高知県地場産業奨励賞などを受賞。今回の講演も、高知県中土佐町「風工房」、高知県窪川町「あぐり窪川」、愛媛県新宮村「霧の森」の3つの成功例を中心とした内容である。地域興しのコツを単純明快に解き明かしてくれ、極めて分かりやすい。


大原一郎氏(写真提供・中小企業診断協会本部)

1.農家主婦のイチゴ・ケーキで行列

もの創りには、つぎのような3つのポイントがあるという。
@(問題の)本質の解決・・・無から有を生み出せ。
A好き嫌いのはっきりした物創り・・・多数派でなく少数派の意見を尊重。
B興味を引いてくれる情報を流す。
中土佐町のばあい、イチゴ生産者が8軒あって、毎年数トンの規格外品を捨てていた。指導依頼内容は「規格外イチゴを使ったジャム作り」だったが、どこの果物地帯でもジャム加工をしているので個性化が難しい。そこでケーキ店が1店もない町に、「イチゴをふんだんに使ったケーキの店−風工房」を立ち上げた。スポンジにもイチゴを練り込み、沢山のイチゴも載せたイチゴの香り一杯のケーキ。これをイチゴ農家の主婦に作らせた。主婦たちは当初「パティシュでない私たちには無理」としていたが、「違うんだ。イチゴ農家の主婦が作ることが売りになる」と説得した。
製品に自信を持ってから、町のお偉いさん、町民、ご主人連を集め試食会をした。すると、「甘過ぎる」「でか過ぎる」「高すぎる」「くど過ぎる」「パティシュのケーキが食べたい」「百姓の作ったケーキなど食いたくない」「これでは赤字になる」との多数の声が出た。「イチゴがたっぷり使われ、味、香りもよい。大いに食べたい」などは少数派だった。しかし、結果は大ヒット。名が県下にとどろき、客が毎日行列。ある日、仕事のついでに橋本大二郎知事が車で寄り、秘書が従業員に「忙しいので、先にいただけないか」と小声で尋ねる。その従業員は皆の前で、「この通り並んでいます。列の後ろに並んでください」と言う。こうなると客も親切に「どうぞ」「どうぞ」と最前列を秘書に譲る。知事も車から取って返し皆にお礼・・・大原氏は従業員、お客さん、知事の3者それぞれの立派さに感動したという。後日、知事との対談放送もあったようだ。

2.中身が60%のジャンボ豚肉マン

窪川町「あぐり窪川」は、道の駅のレストラン。大原氏は「単なる道の駅計画では赤字になる。加工施設の重要性と、地域特産品の開発」を提案した。そして、目にとまったのが農協の冷凍倉庫のなか。売れないためモモ肉やスネ肉などが山積みされていた。
豚マンといえば普通は具が40%、皮60%。それをキングサイズでかつ具60%、皮40%のものを開発した。価格も普通150円ほどを180円に設定。やはり試食会では、「でか過ぎる」「高過ぎる」「具がでかく手で割りにくい」「女性には大きく食べにくい」など批判の渦だった。偶然訪れたコンサルタントも「いまはなんでも小サイズ化している。このサイズは時代に逆行している」と指摘したそうだ。
しかし少数意見ながら主婦などから、「食べごたえがある」「コンビニのものなら2個食べないと満足できないが、これなら1個ですむ」「どこから食べても、すぐ具にぶつかる」との声が出た。やはり結果は大ヒット。「大手メーカーなどの商品の真似ではだめ。一部のマニアに熱烈に支持されれば、それで良いと考える時代だ。目立つことで名物になる」と指摘する。

3.粉茶たっぷりの苦い大福餅

愛媛県新宮村といえは、県内の人も「そんな村あったかな」と知られていない県境の村。依頼内容は「文化施設を核とした複合施設のレストランのメニュー開発」。いくら探しても売り込み資源が見当たらない。ところが「かぶせ茶」という最高品質の茶が作られ、製茶加工もしていた。これに着目し、生クリームも使った大福餅に抹茶をタップリまぶしたものを開発し、松山市の村営アンテナショップを作り「霧の森」ブランドで売り出した。いまでは楽天の通販で年1億円売るヒット商品になっている。このほか湧水でアマゴの養殖をする人もいたので、きれいで美味な湧水の販売もはじめている。
霧の森大福も当初は、「こんなもの苦くて食えん」「こんなもの10円でも買わん」「子供に食わすのはムリ」と酷評され、町の担当者からも「あまり評判が良くないので、内容を変更しませんか」と促された。しかし、「抹茶好きの私にはたまらない味」「口に入れたときの和のインパクト、食べ終えた時の洋のまろやかさが素敵」の少数意見があり、少数意見に軍パイが上がったのだ。
ともかく、「甘い」「大きい」「苦い」といった消費者の興味を引きつける強烈な個性を印象づける情報を商品とともに流す必要がある。そして@期待は低いが、満足度は高い、Aギャップを意図的に作る。ギャップが大きいほど良い、Bそしてギャップが埋って余りあることが大切・・・と指摘する。
さらに「大きな経済効果よりも、地域に見合った等身大の成功事例を作ること」「私たちにも出来るのだと信じることが大切」とも語っていた。これは、地元で生産されるかぶせ茶が不足だからといって、他所の抹茶(あるいはイチゴや豚肉)を混ぜたりすることへの警告を意味する。そして昨今の偽装や賞味期限改ざん事件の、問題の本質をえぐっている。



 
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